第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
んーっ…
あれ…? 俺、なんで……?
気が付くと俺は自宅のベッドの上に居た
あの飴玉屋に出掛ける前と同じ
部屋には小さな電気がつけてあって
ベランダの窓は網戸になっている
ってことは、やっぱり…
「戻っちゃったんだ…」
ベッドから立ち上がりベランダに出ると
本格的な夏になる前のぬるい夜風を感じた
当たり前だけど雪なんて降ってないし
ここから見えてる信号は左から青、黄、赤だし
家の前の大道りを通る車も普通に左側通行だし
何しろ
「この服…」
俺が着ている服は紛れもなく潤くんの服で
俺が急に居なくなったこと、心配したりしてないかな
潤くんのことだから必死に探してくれてたりして…
『雅紀さん!』
耳に残る潤くんの声
『次はお酒も飲みましょうね、雅紀さん!』
子供のようにキラキラの笑顔を向ける潤くんを思い出して
胸がチクッと痛んだ
洋服、返さなきゃ…
お礼も言わなくちゃ
突然居なくなったことも、謝んなきゃ
行こう
あの飴玉屋へ
行かなきゃ
潤くんの所へ
俺は潤くんに借りていた服を脱いで洗濯機を回した
Tシャツとジーンズに着替えて
クローゼットからバッグを取り出し
冬物のコートとニットを詰めた
靴下もちゃんと履いた
チラチラと時計を気にしながら
乾燥まで終わるのを待って
潤くんの服を綺麗にたたむと、別の袋に入れた
「まだ雪が残ってたし、ブーツのがいいかな」
ブーツを履いて、部屋を後にする
コンビニに寄ってお金を下ろしてこよう
飴玉の三万と、プラス二万くらいかな…
給料前だから口座に残高なんてほぼないけど
これは必要経費だ
無駄遣いなんかじゃない
もう一度潤くんに会って
伝えたいことがあるんだ