第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
「……相葉さんっ、大丈夫ですか?」
浴室から戻ってきた松本さんが、身体を擦る俺を見て足早に近付いてきた
「寒いですよね…すみません」
「あ…いや…大丈夫、大丈夫」
本当は全然大丈夫じゃないけど…
俺は笑いながら松本さんに言った
「…風呂、行ってください」
「え?だって今…」
「浴槽のお湯は…まだ半分も張れてないですけど
張れるまでシャワー被ってれば少し違うと思いますから」
そう言って松本さんが俺の腕を掴む
そのまま強引に立たされて、脱衣所まで連れていかれた
「バスタオルはここです、ドライヤーはここ…」
一通り物の場所を教えてくれた松本さんは、また可愛い笑顔を俺に向けて"じゃ"と扉を閉めた
「さむさむ…」
閉まったと同時に俺は服を脱いで浴室へ
目の前のシャワーを速攻で取ると頭からお湯を被った
「っはー…あったかい…」
髪を掻き上げながら
頭の先から足の先まで夢中でお湯を掛け続ける
……幸せ
あったかいって、良いなぁ…
のんびりそんなことを思ってたら
"ピピピ"ってなんか音が…
「あ、お湯が溜まった音か」
納得すると身体と頭を洗ってから浴槽に身を沈め、あぁー…と親父臭い声を漏らした
生き返る…
さっきまで色んなことを考えてたけど…
今はもう何も考えたくない…
バスタブの縁に頭を乗せて身体の芯まであったまった
そろそろ上がろうと立ち上がる
「えーっと…」
お湯が減っちゃったから、次に入るであろう松本さんの為にお湯を溜めようと思うんだけど…何が何?
壁に埋め込まれたリモコンのボタンが英語で書かれてて…全く読めなかった
しかもボタンがやたら多い
ただの給湯器じゃないなこれ…どうすりゃ…
「とりあえず押してみるか…」
端のボタンをポチっと押してみた