第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
松本さんのことで色んな思考を巡らせていたら、もう部屋の前まで来ていた
「ここです、俺の部屋」
鍵を出しながら松本さんがにっこり微笑む
なんか…松本さんって笑顔可愛いな
……何言ってんだ
「どうぞ」
鍵を解いた松本さんが扉を大きく開けた
「お、お邪魔します…」
俺はへこへこ頭を下げながら部屋の中へ入る
長めの廊下を歩いて、目の前の扉をそっと開けると清潔感溢れる広いリビングに出た
「うわ…すごい綺麗ですね
しかも広いし…羨ましいです」
「そんなことないですよ」
いやいや、そんなことあるって
俺の部屋とは大違いだよ…
「あ、風呂の準備してくるんで
適当に座っててくださいね」
「え」
「テレビ、見ててもらって構わないんで」
「ちょ…」
「あ、リモコンこれです」
俺にリモコンを握らせると
松本さんはソファに荷物を置き、リビングを出ていってしまった
リビングでポツンと佇む…俺
「……いい人だな…松本さんって」
ここまでしてくれるなんて…
「さむ…」
ブルッと身体が震える
雪が降ってるから部屋の気温が低いんだ
松本さんは気を遣って、暖房をつけてってくれたみたいだけど…
温かい風が出るにはまだまだ時間が掛かりそう…
「うー…」
手で身体のあちこちを擦りまくった
ソファへ座っても続けながら、何気に部屋の中を見渡す
…高級なのを抜かして部屋を見ると…普通だ
特に変なものはない
ないけど…あの黒い棚は、松本さんからすれば白い棚で
6月なのに暖房を入れるのは普通で…
ここは間違いなく、日本なんだよね?
なんか違うとこに来たみたいに錯覚しちゃう