第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
「いやっ…!そんな、申し訳ないですからっ!
お金払ってもう帰りますし…!」
俺はコーヒー一杯分の小銭をテーブルの上に置いて、店を出ようと立ち上がった
「お待ちください、お客様!
その格好で外に出られたら風邪を引いてしまいますよ?
雪も降り始めてますから」
雪だって?
何言ってるんだ
今は6月だぞ?
小さな窓の曇りを掌で拭いて外を覗き込むと
…嘘でしょ?
ウェイターさんの言う通り
本当に雪が降っていた
「本降りになりそうですね
良かったら、これ
それと、コーヒーも冷めないうちにどうぞ」
店に置いてあるブランケットを渡され
コーヒーをスッと目の前に置くと
もう一度ニコリと笑って
ウェイターさんは去って行った
「あっ…ありがとうございますっ!」
帰る時もう一度ちゃんとお礼を言おう
カップに口を付けると
コーヒーの良い香りが鼻に抜けた
ブランケットとコーヒーの温かさ
それから人の優しさがやけに骨身に染みて
心が温かくなる
しかしいったいどうなってるんだろうか
確か…
口に入れた瞬間、シュワシュワと飴が溶けていって…
願いを三回唱えて…
口の中から無くなったと同時に酷い頭痛に襲われて…
あぁそうか
意識が朦朧としてその場に倒れたんだった
それで…気が付いたらここにいた
キョロキョロと店内を見渡すと
カウンター横の壁に掛けてあるカレンダーを見つけた
カレンダーには2016年6月16日までバツ印が付いている
ということは、なんだ
今日は6月17日
日にちは何ら変わりないのに
季節だけがおかしいのか