第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
❦ M ❦
「……様、お客様?」
ん…
肩を叩かれ、ハッと我に返った
あれ…ここ、どこ…?
「あぁ、良かった
具合を悪くされたのかと思いました」
黒服のウェイターがホッとした面持ちでこちらを見ている
どうやら俺はレストランに居るようだ
テーブルの上には空のコーヒーカップ
俺が飲んだのかな…?
「ラストオーダーになりますがご注文はございますか?」
「あっ…じゃあコーヒーを」
「かしこまりました」
この店、エアコンが効きすぎてるんだろうか
夏だというのに肌寒い…
「やばいっ…金…!」
慌ててスウェットのポケットに手をやると
ちゃんと財布は入っていた
中を見ると小銭が雀の涙ほどしか入っていない
テーブルの上のオーダー表には
既にコーヒーを一杯頼んだ形跡があった
どうしよう…お替わりしたら金が足りないや…
「お待たせ致しました」
先程のウェイターがコーヒーを持ってきてくれた
「あの…
すみません、手持ちが足りなくて…
やっぱりキャンセルしてもらえますか…?」
あぁ、恥ずかしい
いい大人が
お金が足りなくてオーダーをキャンセルするなんて…
ウェイターさんは一瞬驚いた顔をして
今度はニコリと笑った
「こちら、当店からのサービスでございます」
…え? サービス?