第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
❦ H ❦
「はい、確かに」
手の中の札をそっと確認した伊勢貝さんがにこやかに笑う
…ホントに大丈夫なんだろうな
一万の飴って
「少々お待ちを」
変わらず笑顔の伊勢貝さんがポケットから真っ白な手袋を取り出す
それを両手にはめて、慎重にショーケースの扉を開くと、並んでいる飴玉を一つ摘まんで出した
「お手を」
「は、はい…」
スッと出した俺の両手の上へ優しく置かれた紫色の飴玉
すごい…なんか
ケースから見るより輝いてる
これはビー玉ってより宝石に近いかも
「その飴玉でございますが…
一つだけ、注意点がございます」
「え…注意点…?」
「はい、これを守っていただかないと願いは叶いません」
「えっ!?」
それじゃ困る
飴に一万も出しといて…叶わないなんてなったら金をドブに捨てたと一緒だ
「ど、どんなことを注意すれば!?」
「難しいことは何もございません
ただ飴玉が舐め終わる前に、願い事を三回心の中で唱えていただく
それだけでございます」
「…それが注意点?」
「はい」
なんだ、それなら大丈夫か
「よし…」
手のひらの飴を片手で取って口の前まで持っていく
いざとなるとなんか緊張するな…
ふぅーっと息を吐いてゆっくり飴を口に含んだ