• テキストサイズ

びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


今日はもう和也を休ませてくれる様にと
楼主に伝える為に蜩の間を出ると
最上階にある楼主部屋へと向かった



「雅紀さん、」


後ろから声をかけられ振り返ると
そこには藍姫がいた


「お疲れ様、藍姫」

「疲れてなんかいないよ
潤様は紳士でね、お酒を酌み交わして
時間を忘れてお話に耽ってしまったんだ」

「潤様?
珍しいね、藍姫がお客人を下の名前で呼ぶなんて」

「ふふっ。そうだね」


ふわりと微笑う藍姫は
まるで恋する乙女のように可愛らしかった



「よっぽど楽しかったんだね?
…櫻井様とはまた違ったタイプの様だし、」

「櫻井様は今日水揚げだった…和也、でしたっけね
その子を指名したんでしょう?
様子はどうなの?」

「…心を痛めてしまってる様だから
今日はもう上がらせようと思ってね
これから楼主のところへお願いに行くんだ」

「…そう。
ねぇ、雅紀さん、」



藍姫は『あの子と話がしたい』と持ちかけて来た
コツを伝授してあげたいらしいけど
こんなことは初めてで驚いた

トップ魅陰から直接アドバイスを貰えるともなれば
下端の魅陰からすればこんなに有難い話はない
しかも櫻井様は、ついこの間まで藍姫のお客人だったのだから。



「じゃあ、楼主に伝えておくよ。
藍姫はこの後予約が入ってるだろう?」

「そうだね。
その後でもいい?
あの子にもそう伝えておいてね」

「あぁ。
悪いね、藍姫。宜しく頼むよ」


藍姫の奴…何か心境の変化だろうか
兎にも角にも有難い話だ




楼主にはすんなり承諾して貰えた
あとは藍姫が上手くやってくれるだろう

和也には素質がある
従業員としては大切に育てていきたい。
一人の男としては…本当は……


辞めよう。
今はそんなことを考えても仕方がない
俺には身請け出来るほどの財力は無いんだから。

せめて和也が此処で生きやすく居られるようにしてやりたい
もう、声を殺して泣く事も
耐える様に唇を噛む事もない様に…

藍姫がそれを買って出てくれたのなら
願ったり叶ったりだ




…頼むよ、藍姫。
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp