第1章 かりそめの遊艶楼
『この壷の中に入ってるのは、ローションって言ってね
和也の身体を傷付けないようにする為に大事なものなんだ
壷の中に指入れてご覧?』
『うわっ…トロトロしてる…』
『このトロトロがね、滑りを良くするんだよ』
掌にローションを塗りたくり
和也の中心に触れて上下すると
小さな声をあげて身体を硬直させた
『あぁっ… はっ、はぁっ…やだ…うぁぁっ…!』
『大丈夫だよ』
呪文のように
何度も『大丈夫。』と囁く
ビクッと大きく身体をしならせて
和也が白濁を飛ばした
『これが射精。気持ちいいだろ?
これをね、和也の此処を使って
お客にしてあげるんだよ』
蕾に触れて指を少しナカに捻り込ませると
『うぁっ…!』
初めての感覚に
身を捩って抵抗した
『大丈夫だよ、大丈夫…』
『痛いっ…! やめてぇっ…!!』
指でじっくり慣らしてから
俺の熱の塊を押し沈め
何度か突いた
あの時確か和也は
最後まで『いやだ』と言い続けていたんだっけな
その後
早く慣らす為に
暫くは眠る時に拡張を挿れたままにしておくようにと言ったんだ
次の日から和也は
『痛い』とも『やめて』とも言わなくなった
その代わり
血が滲むほど唇を噛んで
痛みではない何かに耐えるようにしていた
そして最後の指南を終えた日
『お付き人が雅紀さんで良かった』
そう言って
声を殺して泣いたんだ。
蜩の間の褥部屋の襖を開けると
和也が眠っていた
乾いた涙の跡
一部腫れて鬱血した下唇
「頑張ったね、和也。
…初仕事お疲れ様」
髪をそっと撫でて
頬にキスをした
…胸が苦しい。
俺は和也の元お付き人で
和也は客に身体を売る魅陰で
なのに
なかなかどうして
お前の事が好きなのかな、俺。
「んっ… 雅紀さん…?」
「痛むところはないか?」
「……」
「今日はもう無理しなくてもいいよ…?
楼主には俺から言っておくから、」
「でも…
僕はこの仕事をしなきゃ生きて行かれない…」
不安そうに揺れる、目。
「痛いのは心だけです
だから大丈夫…」
そんな顔されちゃ
俺が大丈夫じゃないよ
「和也」
今にも泣き出しそうな和也をギュッと抱きしめた