第2章 バーチャルな君と僕
次の日
ーコンコンッ
「…はい」
「和也…あ、まだ布団被って…学校は?」
「……お腹痛い」
「えっ、あらあら大丈夫?」
「痛い」
「そう…じゃあ今日はお休みしなさい
お母さん連絡いれとくから」
「うん…ありがと」
「安静にしてるのよ?」
「うん…」
部屋の扉がパタンと閉まる
「…ごめん、お母さん」
仮病なんか使って
行く気…しないんだ…
階段を下っていくお母さんの足音が消えると
僕はむくりと起き上がってベッドの下からノートパソコンを取り出した
ちょっとホコリが被ったそれ
あーあーと思いながらフーッと息を吹き掛けた
「…ケホッ」
舞ったホコリを片手で振り払って、ティッシュを数枚抜き取る
それでパソコンを綺麗に拭くと
机の上に置いて、開かずじっと見つめた
『これからもリクエストじゃんじゃんしてください!です!』
『女性アーティストの切ないラブソングとか…
もっと聞いてみたいです』
『中島美嘉、好きですか?』
『ORION好きです!
サト君の歌うORION、聴いてみたいです!
男性アーティストなら、ゴスペラーズもいいなぁ』
『ゴスペラーズですね!
アップしたら是非観てくださいね!』
思い出されるサトシ君とのメールのやり取り
終わったことだと思っても
こんなに鮮明に覚えてる
忘れようとしても
瞼を閉じれば自然とサトシ君が浮かんでくる
…夢にまで出てきたんだ
「ダメだな…僕」
勝手に終わらせようとしたくせに…
やっぱ僕はサトシ君が好きなんだ
『……だった』
過去に気持ちを置いてけない
これからも
サトシ君が……好き