第2章 バーチャルな君と僕
❦ 和也Side ❦
サトシ君から逃げ去った後
僕は沈んだ気持ちで帰路についた
玄関の扉を開けるとすぐに"今日は遅かったわね"とリビングからお玉を持ったお母さんが顔を出す
それに引きつった笑顔で"うん"と返して
2階へ上がった
「……はぁ…」
部屋に入って早々
ベッドにスクールバッグを放り投げ
床にブレザーを落として…
僕はドスンッと椅子に座った
今日はもう…なんにもしたくない
『サトシ君のことが……好き……だった』
あの告白で全部エネルギー使っちゃったから…
今の僕はすっからかんだ
「……はぁ…サトシ君…」
呟きながら机に突っ伏して目を閉じる
さっきまで見てたサトシ君の顔がほんわりと浮かんできて胸がきゅんとした
真面目そうな顔…だったな
カラオケでちらっと見た時もそんな印象だった
眼鏡のせい?
外したらもっと…優しい顔なのかな
もっと…かっこいいのかな
見てみたかったな…
「…あ…」
伏せてた頭を上げて、スッと立ち上がった
何考えてんだろ…僕
終わったことなのに
僕が…終わらせたことなのに
しばらくその場で立ち尽くして
下からお母さんの声が聞こえてくると静かに部屋を出た
その日はもう
サトシ君のことを考えないように
勉強と寝る以外は極力リビングで過ごした