第2章 バーチャルな君と僕
「よく似合ってるよ!」
「そう…ですか?」
童顔の僕にはミスマッチだろうと思っていたこの髪色も髪型も
プロの美容師さんにそう言われると
なんだか似合ってるような気がするから不思議だ
「いらっしゃいま…おぉ!翔くん!今カット終わったとこだよ」
チラッと顔を覗かせた翔くんの目が大きく見開いた
「いいじゃん! いいよ、智くん!」
「おー! カッコいいよ、兄貴!」
僕はただ照れくさくて
美容師さんに『ありがとうございました』と頭を下げて
破格の代金を支払って美容室を後にした
「次はね、服! 見に行くよ!
さっき潤とあちこち回ってピックアップしたからね」
引きずられるようにしてあちこちのショップに連れて行かれ
着せ替え人形の如く着替えさせられて
「あー、いいねぇ」
「いや、こっちのが良くない?」
なんか翔くんと潤、めっちゃ楽しそうなんですけど…
やっとの思いで上から下まで一通り買い揃えると
半月分くらいのバイト代は飛んでいったけど
僕の為にここまで一生懸命になってくれた翔くんと潤の気持ちが
素直に嬉しかった
PM5:45
二人からエールを送られ
僕は約束の緑地公園のベンチに一人
来てくれるだろうか
あのメールを見てくれてるだろうか
ソワソワしながら
願いながら
僕はカズナリ君の到着を待った
PM6:00
緊張はピークに達する
イメージトレーニングを何度も何度も繰り返した
時間は刻々と過ぎていき
あたりは暗くなりはじめ
外灯も付き始めた
もう少しだけ待ってみよう
もう少しだけ
あと少しだけ…
だけど
どれだけ待っても
時計の針がPM8:00を指しても
カズナリ君がこの場所に現れる事はなかった