第2章 バーチャルな君と僕
「ここ…美容院?」
翌日
翔くんと潤に連れてこられたのはオシャレな美容院で
「ね、こんな高そうなとこ無理っ…!」
「大丈夫、大丈夫!
こんにちは〜」
「いらっしゃいませ
待ってたよ、翔くん!
君が今日モデルやってくれる、智くんかな?」
「モ、モデル?!」
「カットモデルだって。
だから値段は破格らしいよ?」
潤が僕に耳打ちする
「カットモデル…」
「じゃあ、お願いしていいですか?
僕達ちょっと出てきますんで!」
「えっ、あ、ちょっと! 翔くん!」
…行ってしまった。
カットモデルなんて聞いてないよ…
「いやぁ、助かったよ
翔くんに頼んだんだけど、今伸ばしてる最中だって言うしさぁ」
気が付けば大きな鏡の前に座らせられて
長いケープをかけられて
「じゃ、先ずはカラーリングから!
因みに仕上がりのイメージはこんな感じね?」
見せられたヘアカタログには
ワイルドなパンクロッカー風のおっかなそーな兄ちゃん…
「そんな、僕、無理ですって!
こんなワイルドにならないし…!」
「いいから、いいから〜♪」
何やら髪に塗りたくられ
放置されてる間は怪し気な機械が頭上でクルクルと廻り
シャンプー台に連れて行かれて髪を流し
鏡の前でターバンのように巻かれたタオルを外すと
Ohーーーーーー! Noーーーーーー!!
生まれてこの方いじったことのない僕の黒髪が
明るい茶色に染まっていた
「カットして行きますねー」
お構いなしにハサミがチョキチョキと軽やかな音を立てて
僕の髪がハラハラと落ちて行く
あー、もう
こんな髪色で
しかもあんな髪型、僕に絶対似合うわけなんて無いのに…
鏡に映る自分を見ていられなくて
ギュッと目を閉じた
「…くん、智くん、終わりましたよー」
…ん?
肩を叩かれて目が覚めた
心地よいと思っていたのは
どうやらドライヤーの温風のせいだったらしい
そうか
寝ちゃってたのか…
「どうですか?」
「え…? これ、僕…?」
鏡を見るとそこには
別人に生まれ変わった自分が映っていた