第2章 バーチャルな君と僕
夢中だった
僕はただ夢中で
思いのままにキーボードを叩いた
まだ切れていない
二人を繋ぐ細い細い糸が繋がってるうちに…
『もう一度、僕と会ってくれませんか
今度は
智とカズナリ君として
明日の夕方6時
今日と同じあの緑地公園のベンチで
待ってます
智』
どうか
どうかカズナリ君がこのメールを見てくれますように…
願いを込めて
送信の紙飛行機のマークをクリックした
「はぁ…」
もしカズナリ君がメールを読んで
待ち合わせ場所に来てくれたとしても
会って何をどう伝えればいいのか
そんな事さえもわからない
ただ一つわかっているのは
このまま終わりにしたくないという強い思いだけ
『じゃあまた来週な』
『うん、気を付けて帰ってね、センセ』
『先生って言うなよ(笑)』
潤の部屋のドアが開く音がして
廊下から潤と翔くんの声が聞こえた
そうだ
翔くんなら…
僕は慌ててドアを開けた
「うおっ!」
「わっ! どうした、兄貴!」
「ごめんっ…翔くん、まだ時間ある?」
「まぁ、あるけど…」
「その…話、聞いて欲しくて」
「話?」
「ここじゃなんだから僕の部屋、入って?」
「俺は? 俺は居ちゃダメなの?」
この際、潤にも全部話して
写真の事も謝ろう
そう思って、二人共部屋に招き入れた
「動画投稿サイトの【歌ってみた】って知ってる?」
「あぁ、知ってるけど?」
「それ、僕もやってみたんだ
それで、ファンになったって言ってくれた子がいて…」
「えっ! 凄いじゃん!」
「兄貴、歌は昔から上手かったもんなぁ」
「それで、その子と個人的なやり取りを始めたんだけど…」
自分だと偽って潤の写真を見せたこと
その子があの日偶然うちの店に来て、僕達のやり取りを聞いていた事
以来、連絡が来なくなったこと
その子の友達に呼び出されて、会ったその子は男の子だったこと
告白されたこと
僕は二人に全てを話した