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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第2章 バーチャルな君と僕


❦智Side❦



僕に背を向けて
突然走り去ったカズちゃんの背中を
ただ黙って見つめていた










「あら
お帰り、智。夕飯は?」

「要らない」


母さんの方を振り向きもせずに階段を登り
真っ直ぐに自分の部屋に向かう

パタン、とドアの閉まる音が
やけに冷たく響いた


僕はパソコンを立ち上げた
今日まで欠かさず毎日確認してたメールボックスにはもう
カズちゃんからのメールが入って来ることは無いだろう

無意識に指が動いた先には
【アカウント削除】の文字
ここをクリックすれば“サト”は消える



なのに




『サトシ君のことが………好き………だった』




カズちゃんから絞り出された言葉が
頭を掠めてそれを躊躇させた

過去形ではあるけど
僕のことが好きだと
カズちゃんは確かにそう言ったんだ

男の子にそんな事を言われたのは初めてだった
でも…
不思議と嫌じゃなかった
寧ろ
あの時、少しだけドキッとしたんだ


思い出すのは写真のカズハちゃんじゃなくて
制服を着た、男の子のカズナリ君の姿ばかり




「やっぱ、可愛かったよ…
って
何言ってんだ、僕は」


カズちゃんに喜んで欲しくて歌ったことも
あんなにドキドキした時間も
嘘を吐いてまで繋ぎ止めておきたかった想いも
此処にはたくさん詰まっている
それが
ボタン一つで何もかもが“無かったこと”になってしまうなんてそんなの悲しすぎる
でもそれだけじゃない

それだけじゃないんだ


「何なんだ、この気持ちは…」


失いたくないのは
“カズハちゃん”との思い出なのか
“カズナリ君”自身なのか

この、靄がかかったような気持ちは何なのか

確かめたい
もう一度会って確かめたい

そう思った
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