第2章 バーチャルな君と僕

すかさず、返事を打ち込む


『中島美嘉のORIONとかどうでしょうか？
さっきPVの動画を観ていて、なんかいいなって思いました！

中島美嘉、好きですか？


サト』


好きじゃない、とか言われたらどうしよう…
ドキドキと緊張が走る


あっ！新着メール来た！


『ORION、好きです
サト君の歌うORION、聴いてみたいです！

男性アーティストなら、ゴスペラーズもいいなぁ
サトくんの声に合いそうかなって思います


カズハ』



ゴスペラーズ！！


あんま聞いたことないけど
カズハさんのリクエストとあらば！！


検索『ゴスペラーズ　切ないラブソング』


カズハさんにキュンキュンしてもらいたい
その一心で、ゴスペラーズの動画を検索しまくった





「わぁ…これ、いい」


クリックしたのは
『東京スヰート』という曲

一瞬で心惹かれたこの歌にしようと決めた


『ゴスペラーズですね！
歌ってみたいなと思う歌を早速検索してみました！
アップしたら是非観てくださいね！

サト』




僕とカズハさんを繋ぐ唯一の細い糸は
この動画投稿サイト

この糸が
切れないように
絡まらないように
そして赤く色付いたら嬉しいな、なんて
ガラにもなく思っちゃったりして


顔も知らないカズハさんに対して
僕はどうしてこんな風に思ってしまうんだろうか