第2章 バーチャルな君と僕
「…2時間かい?」
「はいっ!」
「また一人で?」
「何か問題でも?」
「そんなに荷物抱えて
智、お前やっぱり機織り…」
「違いますから、店長」
バイト終わり
今度は2時間、カラオケルームを借りることにした
曲はバッチリ覚えた
何度か歌ってみて、イケそうなら撮ってみようと思ったんだ
「ま、いいんだけどね?
ホレ、烏龍茶」
「ありがとうございますっ!」
早速個室に入って
ビデオカメラをあらかたセッティングし
デンモクに『今夜、君の声が聞きたい』と打ち込んだ
…高い
やっぱり高い
思ったより高い
でもここで挫けるな! やるんだ、智!!
僕は気合を入れて
マイクをギュッと握りしめた
…燃え尽きたよ
真っ白にな…
僕はやりきった
最大限の持てる力を振り絞って
カズハさんの為に歌った
2時間の予定だったけど納得が行かず
何度も撮り直して結局、3時間歌い続けた
店長からサービスしてもらった烏龍茶はとうに飲み干して
喉はカラカラだ
だけど
心地よい満足感が僕を満たしていた
家に帰ると、早速動画をアップする
今日はもう遅いから
カズハさんが見てくれるのは明日だろうな…
コメントだけは入れておこう
『カズハさん
リクエスト曲、アップしました!
上手く歌えてるかわからないけど
もし良かったら聴いてみてください
サト』
聴いてくれるかな
喜んでくれるかな
カズハさん…
カズ…ハ…さん…
夕飯も食べず、風呂にも入らず
ベッドに倒れ込んだ僕は
そのまま意識を手放した