第1章 かりそめの遊艶楼
「雅紀さんにね、お願いして新しい櫛をもらったの
そこにちょっとアレンジしたんだー
って言っても前にお客からもらったシールをちょちょっと貼っただけなんだけどね
さとちゃんには青系、和也には黄色系でまとめてみた!
…僕からの贈り物」
照れ臭そうに笑う琥珀
…心配する必要などありせんでしたね
ちゃんと大人になって…
嬉しいです琥珀
最後にこんな…
もう…いつの間に…
「ありがとう…
素敵な贈り物を…ありがとう琥珀」
「さとちゃん…」
「琥珀様、一生大事に致します」
「和也…」
泣きそうになっている琥珀を奏月と一緒に抱き締める
やはり別れというのは寂しい
「琥珀とは魅陰の時からの仲でしたね…」
「…うん」
思い出せばあんなことがあった、こんなことがあった
3人で夢中で話していって…
ふと時間を気にすると
だいぶ話し込んでしまったみたい
このままお別れの時間
なんてなってしまいそうだったから…頃合いを見計らって
「待ってください…
まだ話していたい気持ちはありますが…皆とも最後に過ごしたい
良いですか?」
そう告げると2人はにっこりと笑い
踊り場にまた皆を集め、一緒に過ごそうと言ってくれた
夜のお迎えが来るまで
皆と話したり、楼の中を歩いたり、掃除をしたり…
思い残すことのないように過ごしていった
咲き乱れる子達の笑顔を記憶していった
そして…別れを告げる扉が開く
「和也ー」
櫻井様が踊り場で元魅陰達と話している奏月を呼ぶ
振り返った奏月が嬉しそうにそちらに走っていった
「智ー迎えにきたよ」
抱き合った2人の後ろから潤様が顔を出し
満面の笑みで手を振る
胸がときめいて
奏月のように、すぐに走って行きたかった
けれど…
「潤様、少しお待ちいただけますか?」
「うん…構わないけど」
「ありがとうございます
皆、雅紀さんも再度集まっていただけますか?」
それぞれに散っていた皆を1ヶ所に集める
奏月も来てくれて
私は集まった全ての子達の顔をじっくり見ていった
皆、違う顔
ここへ来た理由も
心に秘めてる想いも…皆違う
なのに、ここでされることは皆同じだった
どんな気持ちだろうが
生い立ちだろうが
関係なしに大人達は欲望のまま私達の身体を弄んだ