第1章 かりそめの遊艶楼
❦和也Side❦
しっかりと腰を掴み
何度も何度も激しく突き上げられると
その振動が僕の内蔵までをも揺さぶった
「ぁぁっ…やっ……!!」
腰を打ち付ける音
繋がった場所から聞こえる、卑猥な水音
荒い息遣い
背中に落ちる汗
嫌だ
やめて
痛い
苦しいよ……
最奥を突いたその直ぐ後に
ナカに爆ぜた熱を感じ
櫻井様が吐精したのだとわかった
四つん這いで身体を支えていた腕は遂に力尽き
上半身がガクリと布団に沈んだ
埋め込まれていた塊がズルリ、と身体から抜け出ると
“…終わっ…た……”
この無限地獄から一時でも解放されたことに安堵して
うっすらと視界がぼやけて行く
「はぁっ… どうだ、和也。 良かったろう?」
胡座をかいて後処理を始める櫻井様は
満足気に笑みを浮かべていた
本当のことを言う必要など無い
現実との境界線、と
引いたはずの朱い口紅はとうに落ちてしまったけど、全てはかりそめ。
それを思えば
言葉を返す事なく、小さく頷いた。
「良いなら良いって素直に鳴けよ。
お前、可愛い顔して意外と負けず嫌いだな
次はもっと鳴かせてやる。
負けず嫌いなんて言ってられないくらい
快楽に溺れさせてやるよ」
自身たっぷりに言葉を浴びせてくる
僕のこの痛みは
きっとこの人に届くことはないだろう
喉の奥に未だ残る白濁の苦味に吐き気がする
「……申し訳ありません…」
”はい“なんて言えるもんか
痛かった
苦しかったんだ
身体よりも
心が
僕の心が悲鳴をあげていたんだ
「風呂行くぞ」
「…はい、」
怠い身体を起こすと
腰に残る、戒めの痛み
汗と体液の香りを纏う襦袢を羽織って周りを見渡せば
あちらこちらに情事の跡が残っていて
嫌でもこれが夢ではなく現実なのだと知らしめた
「失礼致します」
総檜造りの浴室には大きな窓があり
魅陰になる為の指南を雅紀さんから受けていた時から
この場所が好きだった
「…お背中お流しします、」
「あぁ」
檜桶で湯を掬い
その湯を櫻井様の背中に流す
先に湯船に浸かる櫻井様を追って
手短に身体を洗い
少し距離を空けて自らも湯船に身を沈める
「少し暑いな」
「…窓をお開けしますね、」
冷たい夜風が浴室にすうっ、と吹き込んだ