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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


❦和也Side❦



丸い障子の格子窓から射し込む朝陽を感じて目を覚ました


「ふふっ」


一晩中この様にしてくださっていたのか
頭から包み込むように翔様の胸に抱かれ
脚は翔様に挟み込まれている


「眠っている間も…私を守ってくださっていたんでしょうかね、」


愛しい人の無防備な寝顔に向かい、ポソッと囁やけば
幸福という名の喜びで
心がジンと温かくなった


「んーっ…」


目を覚まされた翔様の瞳が私を捉えて


「わぁっ…!」

「おはよう、和也」


まだ眠たそうなお顔のままで
むぎゅう、と抱きしめられた


「ふふっ。おはようございます、翔様」


翔様の腕の中で身体を揺らせば
翔様も同じ様に身体を揺らす
布団の上で一頻りゴロゴロと戯れると
どちらからとも無くピタリと動きを止めた


「おはようのキス」

「んっ…」


なんと幸せな朝なんでしょう
翔様と二人で迎えた初めての朝
おはようのキス
なんだか気恥ずかしくて擽ったい


「幸せです…」

「俺も…」

「翔様…」

「和也…」


布団の中の翔様の手が襦袢の上を滑り
前を割って太腿に触れる


「ぁっ…」






「失礼致します、奏月様。
朝食をお持ちしました」


慧の声にハッとし
思わず顔を見合わせて笑った

居間に朝食を運び入れる音が聞こえる


「邪魔されちゃったな?」


こそりと耳打ちする翔様が真に残念そうなお顔をされたのが可笑しくて
コクコクと頷いた


「参りましょうか」

「あぁ」


手を取り合って居間に続く襖を開けると
いつもよりも豪華な御膳が二つ、並んでいた


「おはようございます、櫻井様。奏月様。
櫻井様のご出勤のお時間も考慮しまして、早目の朝食となります」

「すまないね、慧くん」

「お気遣いありがとう、慧」

「いえ。ごゆっくりと、お召し上がりください」


慧が部屋を後にすると
向き合って御膳の前に座る


「これは…赤飯? じゃないな
こっちは蛤?」

「祝い膳のさくら御飯と蛤のお吸い物でございますね」

「へぇ…いただきます!
おっ!美味ぇー!」


水揚げの前夜と太夫昇格の時に頂いたことのある、祝い膳
そうか
今日、楼を閉鎖する…だから祝い膳なのですね


「いただきます」


ほんのりピンク色に色付いたさくら御飯は
優しい愛の味がした
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