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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


これで残すは、借金完済のみ
それで全てが終わる

そして…始まるんだ





「櫻の間にございます」


いつものように慧くんが案内してくれた、その部屋の襖に手を掛けてスーッと滑らせる

視界に入った和也も、いつものように頭を下げていた


「久しぶりだな、かずな」

「本日はご指名していただき、誠にありがとうございます」


……あれ


「和也…なんだよな?」

「はい」


だよな
でもこの台詞はもう…あんまり俺の前では言わなくなってたのに


「翔様…いえ、櫻井様
今宵はごゆるりとお楽しみくださいませ」

「……」


頭を上げる和也とぽかんとする俺


「櫻井様」

「あ、はい」

「ご報告がございます
この時間を持ちまして、私共の借金は返済完了…最後ということなります」

「………え?え?…まじ?」

「はい
太夫、奏月としてもこれにて終了と楼主様からお達しがございました
短い時間ではございますが…最後、櫻井様の為に精一杯お務めを全うしたいと存じます
よろしくお願い申し上げます」


再び和也の頭が下がる
深く、長く、噛み締めるように

そうか…最後なのか…
俺は驚きを隠せない顔でとりあえず中に入って
和也の前にしゃがむ

ゆるりと顔を上げた和也が微笑んだ

あ、なんか…

そのあどけない顔
成長してるけど、あどけなさが残る顔…


「思い出すな…」

「…?」

「なぁ、和也……」


覚えてるか?

今からちょうど5年前のこと





『じゃあ、コイツ』


和也の気持ちなんか考えもしないで


『今日はコイツを買う』


金さえあればなんでも手に入ると思ってて


『心…?』


大人なのに、心も愛も分からなかった


俺のこと…


あの頃の俺は本当にばかで…最低だった

そんな俺に変われるきっかけをくれたのは和也…


君だ


和也に出会ってなければ
俺はずっとあんな…最低野郎だった

大袈裟なんかじゃない
成長していけたのも和也のお陰なんだ





「翔様?
何かおっしゃりたいことがあるのでは…」

「あぁ…そうだな…」

「なんなりとおっしゃってください」

「…じゃあ月
月、見ようか…2人で」


和也は目をぱちくりさせてからふわっと笑い
浴室の方が見えますので、と俺の手を引いた
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