第1章 かりそめの遊艶楼
それから季節は巡り
気付けば、3年半もの月日が経過していた
「おはようございます代表」
「あぁ
早速で悪いけど、今日のスケジュール頼む」
「はい
本日は10時より…」
淡々と話されていくスケジュール
今日も詰まってんなと
椅子に腰掛け、パソコンを起動する
…さすがに3年半も経てば馴染むもの
年上社員からの代表呼びにも慣れて
最初こそ戸惑い、苦戦していた経営の方も
代表3年目に入った辺りから徐々に成果を伸ばし始め、今では中々の右肩上がり
経営にうるさい父の評価も上々で
嬉しい限りなんだけど…
俺の会社は正直、まだまだだ
これから先を考えると恐ろしい
大きな問題も小さな問題もきっと山積みだから
…でも、今は先の経営より楼改装の資金が優先
もうある程度は貯まってる
いつ言われても大丈夫だろう
それを早いとこ和也に伝えてやりたいんだけど
「18時より…」
「…まだあんの?」
中々スケジュールの空かない日が続いていた
これも未来の為って分かってる
分かってるけど…
「…分かってるんだけどなぁ」
「はい?」
「いや…」
今日も行けないのか
かなり行ってないのに
半年近く行けてないのに…
「…以上でございます」
「そうか………あれ?会食の予定は?」
「19時まで代表には休むことなく動いていただきますが
本日はそれ以降、仕事関連の予定は一切入ってございません」
「…本当か?」
「本当です」
なら善は急げだ!って椅子から立ち上がり
まず10時からの会談をこなして、それから…とブツブツ呟きながら終わった後のことをもう想像してた
予定より早めに来れて
番頭と話していると踊り場から手を振る潤が見えた
「久しぶりだな、藍姫待ち?」
「うん
後もうちょっとかな」
にこにこ笑う潤の隣に
"和也は20分待ちらしい"と言って座る
「あ、そいえば全然潤の話聞いてないけど
戸籍とかどうなってんの?」
「ふふふ…もう未戸籍の子はここに居ないんだよ?」
優しく微笑む潤の話を聞いていくと
戸籍の件はかなり奮闘したことが伺えた
それを取得したことによって
施設に必要な書類の作成や申請ができ、審査も通り
後は提出しろと言われた必要な紙を届出るだけだと喜ぶ潤
やったな! って俺達はハイタッチをした