第22章 それは2人だけの秘密/コナン
気付けば窓の外はオレンジ色に染まり始めていた。
「ああ、もう6時になるね。どうりでお腹も空いてくるわけだ。どうする?夕飯食べていく?」
簡単なものならさっと作るよ、と提案したが、コナンくんはソファから立ち上がって床に置いていたランドセルを手に取った。
「いや帰るよ。多分蘭姉ちゃんが夕飯用意して待ってるから。」
「ふふふ、蘭”姉ちゃん”ね。」
「これはもう癖になっちまってるんだから、しょーがねーだろ?」
「いいと思うよ。私は今までのコナンくんの喋り方も可愛くて好きだし。」
コナンくんはふいとそっぽを向くと、リビングのドアに手をかけた。
少しばかり頰が赤いのは夕日のせいにしておいてあげよう。
「今度は哀ちゃんも一緒に来てよ。」
「うん、また連絡するね。」
マンションの下まで見送りに出る。
家の玄関を出た途端”小学生の江戸川コナン”になった彼は流石だと思う。もし俳優になることがあれば主演男優賞確実だ。
ランドセルを背負い直したコナンくんはそういえば、と振り返った。
「この家にジンってよく来るの?」
そこの駐車場にポルシェが停まってるの見たことがあって、と続けた。
「たまにね。夜にふらっと立ち寄って行くことが多いかな。…あ、でも家に盗聴器とか仕掛けないでよ!?バレたら私の身が危ない!」
「いくら俺でもそこまで踏み込んだことはしないよ。じゃ、さくらさんまたね。」
慌てた私を尻目に、コナンくんはひらりと手を振って大通りに向かって歩き出した。
私は彼の小さい背中が角を曲がって見えなくなったのを確認して家に戻ったのだった。
ややこしいことになりそうだからジンとコナンくんは鉢合わせないように気をつけよう、そう心に決めて。