第21章 探偵、美術館へ行く/沖矢、コナン
イラスト展示を見て回っている時、ポケットの中で携帯が震えた。
こっちは…新一の方だ!このバイブの振動リズムは蘭からの着信か。
「僕ちょっとトイレ!」
隣に立って同じ絵を見ていたさくらさんにそう告げると、順路を逆に駆け出した。
走り出した直後にさくらさんが何かを言いかけたようだったが、今は聞こえないふりをする。
順路から少し外れた階段の影で立ち止まって、携帯の通話ボタンを押した。変声機のダイヤルを新一に合わせるのも忘れない。
「何だよ蘭、今取り込み中…。」
『あのね新一、私今ホームズ展に来てるんだけど、お土産何がいい?』
そういえばもらったパンフレットに鈴木財閥のロゴもあった気がする。園子と一緒に来ているのか。
蘭の心遣いはありがたいが、自分も今ここに来ているわけで。欲しいものがあれば自分で買える。
しかし何もいらないといえばそれはそれで不審がられるし、どうしたものかと考えあぐねていると電話口の声はなおも続ける。
『えっとね、マグカップとかボールペンとかノートとか…あ、ホームズが被ってる帽子なんかもあるよ!でもやっぱり新一は解説書がいい?』
「あ、ああ、じゃあ解説書を頼もうかな。悪い、今忙しいんだ。その話はまたゆっくり聞かせてくれ。じゃあな。」
蘭からの返事を待たずに通話を切った。
急いで2人のもとに戻らなければ。