第6章 食後の/ベルモット
バイクはとあるビルの前で止まった。
どうやらビルの一階がイタリア料理店になっているらしい。
慣れた足取りで進むベルモットさんの後に続いて店内に入った。
店内はシンプルながらも格式の高そうな雰囲気を醸し出しており、仕事帰りのカジュアルで来てしまったことを若干後悔した。そのことを伝えると日本人は変なところで気を使うのね、と笑われてしまったが。
しかし席に通され、料理が運ばれてくると自分の服装のことなんて気にならなくなってしまった。
前菜からドルチェまで、見た目にも美しく味も申し分ない料理の数々。さすがベルモットさんお気に入りの店というだけある。
「こんないいお店教えて下さってありがとうございます!わりと近くに住んでるはずなのに知らなかったなー。」
「こちらこそ、楽しかったわ。ありがとう。」
いざお会計をする段になって、ベルモットさんは自然に2人分の料金をお財布から取り出した。
「え、あ、あの、私払いますよ、自分の分くらい!」
「いいのよ、誘ったの私だし。」
「でも前回のバーも私の分まで出していただいて、申し訳ないので!」
「ここは見栄張らせてくれる?大女優、クリス・ヴィンヤードが割り勘してるなんて万が一週刊誌にでも書かれたらイメージダウンもいいところだし…ね?」
慌てて私も財布を取り出すが、女優としてのイメージダウンとまで言われてしまえば強引に払うわけにもいかず。
ジンといい、最近自分の財布を開かないことが多くて申し訳ない限りだ。