第29章 (番外編)クリスマス
『Hi,ジンどうしたの?』
「どういうことか説明しやがれ。どうしてさくらに俺の家を教えた?」
『ああ、そのこと。私から2人へのクリスマスプレゼントよ。ワインもチーズも美味しかったでしょ?』
電話口から聞こえる全く悪びれもしない声に、ジンは咥えていた煙草のフィルターを噛んだ。
『それで?いい夜は過ごせそう?』
その言葉に正面のソファに視線を投げる。
規則正しく寝息を立てるさくらの姿がそこにはあった。
彼女が寝入ってから既に4時間。明るかった窓の外もとっぷりと日は暮れていた。
「いい夜もなにも、夜勤明けに誰かの暗号に付き合わされたせいでアイツはまだ寝てるぜ。」
『あら、じゃああなたは生殺しなわけね。それはごめんなさ』
至極楽しそうにくつくつと笑うベルモットの声があまりに不愉快で、会話の途中で通話を切ると舌打ちをして携帯を放り投げた。
それは派手な音を立てて床を転がる。
起こしてしまったかと思ったが、さくらは少し身じろぎをしただけで目を覚ます気配はなかった。