第29章 (番外編)クリスマス
思った通り、サザンテラス口のロッカーの23番には鍵が刺さっていなかった。
ポケットから鍵を取り出してゆっくりと差し込む。
左に回すとカチリ、と錠の外れる音がした。
内心ガッツポーズをしながら扉を開ける。
しかしその中身を見て私はまた項垂れることになった。
中には〈24〉と書かれたプレートのついた鍵だけが1つ置かれていた。
さっきまでのそれとは少し違った形のそのプレートは、手に取ってひっくり返してみるとこの改札からすぐのところにある百貨店のロゴが入っていた。
なんだかたらい回しにされている気分になってきた。
世間はクリスマスと浮かれている中、私は何が悲しくて夜勤明けにこんな訳のわからないスタンプラリーもどきに付き合わされているのだろうか。
百貨店へ向かう道すがら、目についた小石を思い切り蹴飛ばした。
百貨店のロッカーの24番にも、やはり鍵は刺さっていなかった。
そっと回して扉を開ける。
中にはワインが一本入っていた。ご丁寧に”メリークリスマス!”という熨斗付きで。
その熨斗にも例のキスマークが付けられていた。
なるほど、これは誰かからの洒落たクリスマスプレゼントだったということか。
ならば有難くこのワインをいただいて、家で1人で飲んでゆっくり寝よう。
そう、思ったのだが。
「…え?」
底の部分に指が触れると同時、カチャリと音がした。
ひっくり返すとこれまたロッカーの鍵。
セロハンテープで貼り付けられていたそれには〈25〉とプレートが付いている。