第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド
「本当に今日の8時に来るんですかねぇ。」
「しかしうちの山門くんの推理は中々筋が通っていると思いますよ。」
午後7時、病院のロビー。
院長、理事長、事務長、それにキッド担当の中森警部さんに毛利探偵。
この面々に囲まれて平常心を保てる平職員がいたら会ってみたいと思う。
唯一の救いはコナンくんも同席していることか。
◻︎
コナンくんと夕食を食べた翌日、私は朝一番に院長室のドアを叩いた。
あの予告状の意味を伝えるために。
「子どもの俺が言うより、さくらさんの言葉の方がみんな信じてくれると思うぜ。」
そうコナンくんに言われてやって来たはいいが、警察と毛利探偵でも解けなかったものを一医師でしかない私が言ったところで信じてもらえるのだろうか。
しかしその不安は杞憂に終わる。
「じゃあ明後日の午後8時過ぎにキッドは来るということかね?」
「予告状の通りなら。ですからそのことをロビーにいる報道陣に伝えて一度帰ってもらいましょう。すでに外来の診察に支障が出ています。」
ふうむ、と院長は腕を組みなおした。
その横で事務長がすごく頷いている。疲れの見えるその顔に同情を禁じ得ない。
院長はどこかへ電話をかけると、少し待っていてくれと言い残して部屋から出て行った。
残された事務長と顔を見合わせる。
「事務長さんも、大変ですね…。」
そう声をかけると、大きな溜息が聞こえてきた。
数分後に院長は中森警部を伴って戻って来た。
「なるほど、確かに筋は通っておりますな。」
再び私が中森警部に説明をすると、しばらく考え込むようなそぶりを見せた。直後、膝を叩いて立ち上がる。
「分かりました、テレビ局など報道陣には私から伝えます。警察も余計な人員は引き上げましょう。ただし、最低限の人数は残させてもらいます。」