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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第23章 予定外のデート/沖矢


「香りも良いですね!こんなに美味しいコーヒーをご馳走していただいて、かえって申し訳ないです。」

昴さんがわざわざ豆から挽いたコーヒーを一口。程よい苦味と鼻に抜ける香りが格別だ。普段病院で飲むインスタントとは比べることすら失礼なくらいで、ちびりちびりと口をつける。
しかしこれではまるでどちらが礼をする立場なのか分からない。
ありがとうございます、と再び頭を下げた。

「誰かとこの味を共有したかったんですよ。普段は1人で寂しく飲んでいるもので。」
昴さんは頭下げるのやめて下さいよ、と顔の前で手を振ってから、ところで、とカップを置いた。
私もつられて居住まいを正す。

「先ほどの”車で来る友人”とはもしかしてポルシェに乗ってらっしゃいます?」
「ええ、ポルシェに乗ってる人もいますけど…どうしてですか?」

一瞬、昴さんの細い目が僅かに開いた気がした。

「あ、いえ、以前お送りした時に駐車場に黒いポルシェが見えたもので。僕の知り合いも同じ車に乗っているんですよ、偶然ですね。」
「本当ですか?すごい偶然、あの車珍しいですよね。もしかしてその知り合い、私の友人と同じ人だったりして!」

ありえない話ですけど、と心の中で呟いた。まさか昴さんとジンが知り合いだなんてことはないだろう。確かに珍しい車だがクラシックカーが好きな人は少なくないはずだ。昴さんの知り合いとジンは別人に違いない。

「そう、ひょっとするとひょっとするかもしれませんね。」
昴さんが呟いた言葉はきちんと耳に入って来ず、聞き返したものの何でもないです、とはぐらかされてしまった。
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