第23章 予定外のデート/沖矢
「さくらさんが嫌がっているように見えたので声をかけさせてもらいましたが…余計なお世話でしたか?」
「とんでもないです!しつこくて迷惑してたんです、ありがとうございます。もう少しで実力行使せざるを得ないところでした。」
ぐっと右手を握れば、それは怖い、と肩を竦められた。
「昴さんはどうしてここへ?家から結構離れてますよね?」
「ここの書店は工学系の本が豊富なんですよ。確かに家から距離はありますが、よく利用させてもらっていてね。」
トントン、と昴さんは紙袋のロゴを指で叩いた。
その書店は駅に隣接するビルにあり、利便性の良さと専門書を多く取り揃えていることもあって私もよく利用していた。
「分かります、書店にも得意なジャンルがそれぞれありますよね。あ、知ってます?杯戸駅前の書店はミステリー系充実してますよ!かなりマイナーな作家まで揃えてるのでオススメです!」
「それはいいことを聞きました。今度行ってみることにします。」
私の荷物を半分持ってくれた昴さんと並んで歩く。
目的地は駅から徒歩数分の場所にあるホテルの会議室なのだが、如何せん量の多い荷物に苦労していたところだったのでこの申し出は非常に有難かった。
「こんなに沢山の荷物、1人でここまで来るのだけでも大変じゃなかったですか?」
「大変でしたよ!乗り換えはあるし階段は多いし…本当、こういう時に車持ってればってつくづく思います。」
「運転免許をお持ちならレンタカーという手もあったかと思いますが…。」
「あ!なるほど!」
思いつきもしませんでした、と言うとくすりと笑われた。