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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第1章 人助けのつもりが/ジン


(人助けのつもりが)

街灯の少ない薄暗い路地を私は足早に歩いていた。やや治安は悪いが、この道は職場からマンションまでの最短ルートだった。友人達は危険だから賑やかな表通りを使えと言うが、仕事で疲れた身体は一刻も早く自宅に帰りたがっていた。

ついこの間火事があって廃墟と化したビルの前を通りがかった時だった。
微かに感じた人の気配と血の匂い。
怪我でもして動けない人が近くにいるのだろうか。職業柄知らんぷりすることはできず、血の匂いを辿って廃ビルの中を覗き込んだ。

はっと息を飲む。
柱に寄りかかるように長い銀髪の男性が座り込んでいる。辺りに点々と落ちている血痕は恐らく彼のものだろう。肩で息をしているところを見ると相当重症のようだ。
しかし息を飲んだのはそれだけではない。彼の鋭い眼光と共に銃口がこちらを向いていたからだ。

「誰だ」
そう問う声も冷たい。

「えっと、その、私はただの通りがかりで…怪我をしているようなので応急処置だけでもと思って…あ、私これでも救外の医師なんです」

医師、そう告げると彼はやや警戒を解いてくれたように思う。

「止血だけしてくれればあとはどうにかする」

銃口が下されたのを確認して近づく。
血で湿ったコートをよけ腹部、太腿、左腕と患部を確認していく。
生憎きちんとした包帯などは持ち合わせていなかったので、手持ちのタオルやハンカチでなんとかしようと試みてはいるが、如何せん出血が多すぎる。このままでは出血多量で彼が意識を失うのも時間の問題だ。段々と呼吸も荒くなってきている。

「あの、」
「…何だ」

声を出すのもやっと、といった様子に私は彼の傷ついていない腕を自分の肩へまわした。

「私のマンションすぐ近くなので、とりあえず行きましょう。少しだけ我慢してくださいね。」

よいしょ、と掛け声とともに立ち上がる。
ダイエットのつもりのジム通いがこんなところで役に立つとは。
離せ、だの放っておけ、だの彼の口から聞こえたような気はしたがとりあえず無視して歩を進める。文句なら治った後でいくらでも聞いてやるのだから。
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