第21章 folder.5
「翔、おまえ、スーツ着ろよ」
突然、ボンの部屋に呼び出されたかと思ったらそんなことを言われた。
「そうだなあ…これなんかどうだ?」
「えっ…いや、あの…?」
「サイズは…大丈夫だろ。ほら、着てみろ」
ボンの部屋のキングサイズのベッドの上には、たくさんスーツが出してある。
その中から仕立てのいいのを選んで俺に当ててる。
「い、いや、なんで?」
「ん?お前今月5億入れたろ?だから幹部昇格な?」
「えっ…」
今の若頭が引退することになって、ボンが正式に若頭になることになった。
それとともに、大野組の幹部連にも若干変化があった。
俺はあいかわらずボンの後ろについてまわってるだけだったけど、草彅の叔父貴から教わった株のインサイダー取引は順調に儲けを出すようになっていた。
そして俺が胴元のスポーツ賭博も、軌道に乗っていた。
シマも手下も持っていない俺が、幹部に昇格するためにはやっぱりマネー・ビジネスだ。
そう思い定めてから、2年が経過していた。
「すげえな…2年で若衆頭か…」
「えっ…俺が!?」
ボンはにっこりわらうと、シャツをばさりと俺の頭に掛けた。
「それ、やるから。着とけ」