第20章 folder.4
髪を黒髪に戻した日。
ボンはわざわざ夕飯を外で食おうと誘ってきた。
ボクシングのジムで一汗流して、大野の家に戻る。
ボンはその間、絵を描いていた。
最近、組長は外に女ができたらしく、家に帰ってこない。
まだ壮年だし、組長だし、ヤクザなんだからいくらでも外に女がいても不思議ではない。
ボンももう大人だから、その辺は割り切っている。
でも、いまだにアトリエには亡き母の写真を飾っている。
月命日には、必ず写真の前にコーヒーを置いている。
まだボンが小学生の頃に亡くなったというから、仕方のないことだ。
「翔。準備できたか?」
部屋で髪をセットしていると、ボンが戸を開けた。
「うを。ビビった…」
「ごめん…ノックしたほうがいい…?」
急に、ボンが俺から一歩引いてしまった。
「…どうしたの…?そんなの気にしないよ?」
座りながら手を伸ばしたら、整髪料がついていたから服でごしごしこすってからボンを抱き寄せた。
「翔に…嫌われたくないから…」
ずっきゅーーーーーーんっ
「ちょ…きゅ、急にどうしたの?」
ボンは顔を真っ赤にして俺にしがみついてきた。
「だってっ…だってだって…!」
子供みたいに、俺にしがみつく。