第19章 folder.3
「どうしたの…?翔…」
ボンが身体を離して俺の顔を見る。
その瞳は不安に揺れている。
「ごめん…なんでもない」
目にかかる前髪を梳くと、まぶたにキスを落とす。
「あ、なんでもあった」
「えっ?何?」
「一億儲けた」
「え?」
「草彅の叔父貴に初めて褒められたよ…俺…」
「翔…!」
「ボンも褒めてくれる?」
「褒めるっ…!」
勢い良く抱きついてきたボンの身体を抱きしめた。
「翔やっぱ、頭いいんだな…」
「叔父貴の教え方がいいんだよ…」
突然、俺を抱きしめるボンの腕に強い力が入った。
「ボン…?」
「翔…」
「どうした?」
「…やっぱり、翔は…」
こんな世界にいちゃいけない
そう言いそうな唇を強引にキスで塞いだ。
「んうっ…」
藻掻いて離れようとする身体を、強い力で抱き寄せて離さない。
智…
もうお前から離れることなんてできないんだ
「まだ、わからないの…?」
「え…?」
離した唇に銀の糸が渡る。
それを指で絡め取ると、ボンの唇に塗りつけた。
「俺達は…離れられない…」
「翔…」
「絶対に、離れないからな」
「でも…」
それ以上言わせない。
またキスで唇を塞ぐと、それ以上もうなにも言わせない。