第17章 folder.1
ボンにそう言うと、目を細めて笑った。
「いいな、そういうの。普通はおふくろに買ってやるもんだけどな…」
そう言うと、棚に置いていたマグカップを手にとってまたコーヒーを飲んだ。
「あっ…ボン、代わりにもらってやってください!」
「えっ…?」
「俺もう、家族居ないんで。ボンが親代わりと思って、貰ってやってください!今日、誕生日なんでしょう?」
ボンは呆然とした顔をしていた。
「あっ…」
随分余計なことを言ってしまった。
「す、すいません!こんな中古品嫌ですよね!?」
慌てて手を引っ込めて、頭を下げた。
「いや…いいよ。じゃあ、くれよ」
そう言って細い手首を差し出した。
「へっ?」
「いいっつってんだろ。早くしろよ」
照れながら、シルバーのブレスの嵌まる手首をぷらぷらさせた。
「は、はいっ」
なんだか嬉しかった。
きゅっとブレスを締めると、それはとてもボンに似合っていた。
「良かった。似合う…」
「…ありがと」
ぷいっと横を向くと、またコーヒーを飲み始めた。
照れてるんだ。
かわいい人だな…
「櫻井」
「はい?」
「今晩…親父と一緒に飯食うから、お前も一緒に食えよ?」
「えっ?」
「城島も一緒だし、お前は俺の舎弟だから、いいんだよ」
「で、でも…」
「ちゃんと親父に紹介するから。お前、ここで生きていくんだったら、きっちり面倒みてやるから」
じっと俺を見た。
「生半可な気持ちじゃねえんなら、な」
「…はい…」
「組長に顔を覚えてもらえば、なにかと便利だぞ」
「はいっ…」
なんだかわからないけど…
この人についていけば、間違いない気がした。
【Folder.1 END】