第15章 落陽の夢
気がついたら、和也の肩に寄りかかりながら歩いてた。
「あ…」
「智…大丈夫…?」
「ああ…」
「良かった…」
和也の手が俺の頬を撫でた。
ぬるり、手が滑って行った。
「え…」
和也の身体が道路に倒れこんだ。
「ちょっと…まて…よ…」
抱き起こしたら、手のひらにべっとりと血が付いた。
「和也っ…」
「大丈夫…」
俺の手に掴まりながら、和也は立ちあがった。
「行こう…?」
真っ白な顔で俺に微笑みかけてきた。
「ああ…」
どこに、行こう…
肩から流れる血は、びっしょりと俺の上着を濡らしていた。
少し、寒い。
だんだん、周囲がパトカーのサイレンの音で埋め尽くされる。
街の空気がざわざわと俺達を遠巻きに見ていた。
前方に橋が見えた。
なんとかそこまで、和也を引きずるように歩いた。
手すりに掴まると下を覗き込んだ。
「和也…?」
和也は返事をしない
「なあ…ここで、いいか…?」
深い緑色の水に、夕日が映っていた。
街は緑と赤色…
クリスマス…そっか…もうすぐ…クリスマスだもんな…
綺麗だな…
キラキラ光る街と水面に映える夕日を暫く眺めた。
遠くで声が聞こえる。
「行こうか…和也…」