第2章 もがれた翼
「うるせえ!」
後ろから運転席のシートを蹴り上げた。
「いいえ!聞いて下さい!エンコ詰めてもいいです…」
「あんだと…?」
「今日、行かないと…親父が盃を割るそうです」
「……」
「頼んます…ここで翼竜会から抜けたら…的にされちまいます…頼んます…」
「…てめえわかってんのか…?今日行ったら…どうなるか…」
「わかって…ます…」
相葉はそう言うと短刀を取り出した。
「組長…これを」
黙って受け取ると、腹へ挿れた。
「わかった…車を出せ…」
「若いもんは、帰してやっていいですか…?」
「ああ…好きにしろ」
相葉はベージュのトレンチコートの裾をたなびかせて車を降りて行った。
もう一台の車にいる若衆に指示を出している。
俺は溜息をつくと、灰がおちっぱなしになって短くなったタバコを吸った。
相葉が車に戻ろうとした瞬間、助手席のドアが開いた。
後部座席のドアも開いた。
「失礼しますよ」
そう言って俺の隣に乗り込んできたのは、二宮だった。
ダークなスーツに身を固めて、黒いトレンチコートを羽織っている。
助手席に乗ってきたのは松本だった。
派手な縦縞のダークスーツに身を包んで、サングラスをしている。
「お前ら…」