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翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第2章 もがれた翼


波の音が聞こえる。


カタリ、音を立ててスツールから立ち上がると窓辺に立つ。
この海辺の家からは、真っ青な海が一面に見渡せる。
水平線の向こうには、夕日が沈もうとしている。
オレンジ色の世界をしばらく眺め渡す。

タバコに火を付けると、辺りが少し暗くなった気がした。
灰皿を引き寄せ、窓枠に置く。
燃えるような太陽が、だんだん海へと沈んでいくのを幾度ここでみたことか。
何度見ても飽きない。
紫煙を吐き出すと、ガラス窓に当って立ち上っていく。
煙にオレンジ色が反射して、部屋の中を揺蕩った。

太陽の先端が海に沈み込む、その前…
たばこをもみ消すと、俺は部屋を出た。

「また来る」

外に出ると、途端に潮風が吹き付けてくる。
マフラーが舞い上がる。

「組長」
「ああ、わかってる」

若衆が車のドアを開ける。
そこに滑り込むと、またタバコに火を点けた。
運転席に目を遣ると、相葉が座っていた。

「なにやってんだおめえ…」
「すいません。今日は親父の呼び出しが…」
「俺は行かねえと言っただろ」
「しかし、組長…」
「てめえの頭は誰なんだよ…相葉」
「大野…組長です…」
「考えりゃわかんだろ…」
「でも!組長!」

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