第15章 落陽の夢
「なに笑ってるの?」
「ん…?なんでもねえよ…」
でも和也も笑ってて…
きっと、同じこと思い出してたんじゃないかな…
また懐のスマホが震えた。
何回目かのショートメッセージは、目の前の建物を指していた。
「ここ…」
「うん」
大きな邸宅だった。
繁華街から少し枝道に入った所。
高いビルが立ち並ぶのに、そこだけぽっかりと穴が空いたように2階建ての豪邸が建っていた。
ここに…翔は高校生の頃まで暮らしていたんだろう
玄関の前には黒塗りの車が停まっている。
俺達が近づくと、その車は外に滑り出てきた。
そのまま俺達の横を通って行った。
ちらり、中の連中が俺達を見た。
でもそれだけだった。
玄関に足を向けたその時、いきなり扉が開いた。
身構えてチャカを取り出すと、中から人が駆け出てきた。
「奥様っ…待ってくださいっ…奥様っ…」
狂ったように笑う女と、それを追いかけてまた女が飛び出してきた。
笑いながらすごいスピードでどんどん遠くなっていく背中。
追いかける女は途中で転んでしまった。
「あれ…おかあさんかな…」
「さあ…行こう」
玄関の扉は開け放たれたままだった。
そのまま和也と二人で踏み込む。
玄関ホールの先、開いているドアがあったから迷わずそこに飛び込んだ。