第15章 落陽の夢
遠い海鳴りを聞きながら、和也を抱きしめていた。
腕の中の和也は、小さな寝息を立てながらしあわせそうな顔をして眠っている。
今朝、ここに来た。
二人で持てるだけの荷物を持って。
いつ、どうしようなんて決めてなかった。
ただ、もう俺達のすることはあとひとつで。
それで終わり
そっとベッドを抜けだすと、開けたままにしていたカーテンを閉めた。
窓枠を風がカタカタと鳴らす。
冬の冷気はすぐに体温を奪っていく。
少し身震いして、キッチンに立った。
冷蔵庫から牛乳を取り出すと、ミルクパンに入れて温めた。
「智…?」
寝室から出てきた和也が隣に立つ。
俺の肩にガウンを掛けた。
「冷えるよ?」
「うん…」
掛けた手を握って繋いだ。
指を絡ませて、体温を逃さないように…
「やっぱり海辺は寒いね…」
「ああ…風もあるしな。冷えるな」
牛乳が沸いたから、マグカップに入れた。
ブランデーを垂らすと、芳香が広がる。
ふたつに分けて、一個を和也に渡した。
「ありがとう…」
二人で窓辺に立って海を見た。
灯台の灯りが照らす真っ黒な海面を眺めた。
「…静かだね…」
「ああ」
「波の音しか聴こえない」
心地いいホットミルクの温度が身体を通って行く。
少ししたら身体がほかほかしてきた。