第14章 啼き竜
心臓が、痛い。
「あなた…顔色がよくないですわ…」
「うるさい」
家に帰ると、心配の仮面を被った妻が擦り寄ってくる。
邪魔しないでくれ。
俺の財産と地位を目当てに結婚したくせに…
女なんて全てそうだ
「…出張の準備をしてくれ。暫く戻れない」
「あら…そうなんですの…修のお見合い相手の写真が届いているんですけど…」
「そんなもの、おまえが決めろ」
「いいんですの?」
翔のことなんぞ、忘れきって…
自分で腹を痛めて産んだ子なのに。
俺が亡霊に取り憑かれているというのに。
女なんておぞましい
「郵便物を置いておきますね」
そう言って妻はリビングを出て行った。
封筒の束を手に取ると、見慣れない筆跡があった。
差出人は”藤島景子”。
誰だったろう…
中を開けて取り出すと、地図と便箋が入っていた。
”翔さんのお墓です”
たった一行書いてある。
地図は…千葉の海辺のものだった。
「うっ…うわあああああっ…」
封筒を投げ出して後ずさる。
ソファに躓いて座面に倒れこんだ。
「あなた!?」
妻とお手伝いがリビングに駆け込んできた。
「旦那様!?どうなさったのですか…」
投げ出された封筒を妻は拾い上げる。
便箋を手に取ると、一瞬動きが止まった。