第13章 竜王申し
昨日着て寝たはずのシャツが、何故かベッドの下に落ちてる。
暑くて脱いでしまったんだろう。
そっと隣に眠る女を起こさないようにベッドから降りた。
降り際、程よい茶色の髪を手に取った。
毛先が緩くウエーブしている。
クルンと指先を滑らせると、頭を撫でた。
「すまねえな…」
立ち上がると、床に落ちるシャツを拾って羽織った。
ボタンを留めながらリビングに入る。
ソファに掛けたままのジャケットを取ると、懐に手を入れた。
テーブルの上にこの家の鍵を置いた。
それから貯金通帳とカードを取り出す。
5つ程メガバンクに口座を作ってある。
全部、女の名義に変えておいた。
鍵の横に、3つほど投げ出すとジャケットを羽織った。
その上からコートを着ると、そのまま玄関へ向かった。
「待って…!」
ガウンを羽織った女がリビングのドアからこちらを見ていた。
「これ、なんのつもり…?剛…」
手には貯金通帳があった。
「…受け取っとけ」
「手切れ金?やめてよ…」
革靴を履き終わって女に振り返る。
「そんなつもりはねえけどよ…」
「じゃあなんなのよ…」
「もう、会えないかもしれない」
「剛…」
「腹の子、大事にしてやってくれ…」