第12章 竜飛
…そこで…
文章は途切れていた。
暫く、動くこともできなかった。
翔は、全部知っていた。
ここに入っているデータは、それを示している。
そして、自分の父親に殺されることも…
翔は知っていた。
予想…していたことだった。
どれだけ翔が冷たい場所にいたか、思い知ることになっただけで、なにも感情が湧かない。
血を吐くような翔の言葉。
それほど翔は追い詰められていた。
そして、俺が…
翔の道標だったんだ…
俺は翔が居るから生きていられた。
同じように翔も俺がいるから生きていられた。
だけど翔は…
言えなかったんだ…
自分の父親に殺される恐怖も、自分の父親を殺す恐怖も、俺には言えなかった。
足元が崩れるような感覚に襲われた。
乱れた文章に、翔の俺への想いが詰まっている。
それは、多分。
俺だけが感じられる、翔の葛藤。
連れて行きたい…けど、連れて行きたくない…
自分の居ない世界に、愛するものを置いて行くなんて…
心の弱い俺達には、想像もできない恐怖なんだ。
じわり、手に汗が滲む。
突然、喉から咆哮が漏れた。
「和也っ…」