第11章 竜に翼を得たる如し
喜多川の家に送らせて、中に入ると相葉もついてきた。
「なんだ?帰っていいんだぞ」
「いえ…二宮がくるまでは…」
「あいつは小杉処分するから今日は帰ってこねえぞ」
「…そうですか…」
「いいって。帰れよ」
「いえ、俺も今日はこっちに」
「そうか…好きにしろよ」
そのまま書斎に入って、机に座る。
相葉は入り口で立ってこちらを見ている。
「草彅にバレちまったな…」
「なにがです?」
「翔のこと…」
「…そんなの大したことじゃないですよ…叔父貴には」
「そうかな…」
「ですよ」
立ちあがってブラインドを開けると、庭を眺める。
池から龍が立ち上っているのが見える。
ああ…もう、行くんだな…?
「相葉ぁ…」
「はい」
「櫻井俊が今何やってっか、調べろ」
「わかりました」
確証を得た今、まっすぐに動き出すしかない。
臓器を安く手に入れること…
出世の妨げになるものを事前に処分すること…
「俺の親父たちは…随分まともだったんだな…」
「総長…」
真相に辿り着いたら、全部解決すると思ってた。
でも、そうじゃなかった。
ますます深い森に迷い込んだ気分だ。
でも…
やるしかない。
それが俺の、生きている理由だから。
「…翔…俺に翼をくれよ…」
【竜に翼を得たる如し END】