第11章 竜に翼を得たる如し
「小杉、参りました…」
緊張した面持ちで入ってきた小杉を、冷たい目で見つめる。
「座れ」
ドアのすぐ前の席に座らせると、全員の顔を見る。
「懲罰委員長」
「はい」
草彅が返事をして立ち上がる。
「ちょっと待て、この扱いは心外だ。どういうことだ」
泡くって捲し立てるけど、誰も相手をしない。
「喜多川一家若頭小杉殿に問う。一家で禁忌とされている合成麻薬の売買をしているのはなぜか」
「証拠でもあるのか」
証拠を隠滅したと思って、安心してんのかこいつ…
「証拠は全て総長に提出済みだ」
「なんの証拠だよ…」
俺は草彅の出してきた写真を数枚、テーブルに出した。
東山と近藤が手にとってそれを見る。
そのまま隣にいる者に回していって、松本が小杉の前に置いた。
「なんで…飯島組の若い衆がお前んとこ出入りしてんだ」
飯島組とは横浜を本拠にして、極東翼竜会に属している。
翼竜会は麻薬は禁じていない。
他の一家のシノギにはああだこうだは言えないからだ。
飯島組はシャブの売買で、その道では有名だった。
「それは…」
まだ公安のことは言わない。
もっと追い詰めてから…
「なんでか聞いてんだよ」