第10章 夢路
「どういうことなんだよ…」
調べはつかなかった。
あの時、西村の若頭を襲った者の見当がつかなかった。
目撃した車は盗難車。
西村にぶち込まれた鉛球からわかったのは、拳銃はトカレフということだけだった。
シゲの警察関係をハッキングした結果を見ながら、尻尾が掴めないことに苛立っていた。
松尾の方は、小栗が抑えたようで動いている気配はない。
西村の組長は雲隠れしたままで行方が掴めない。
小栗も把握していないことで、どうにもならなかった。
事態は膠着して、西村組はあと一歩で壊滅させることができていなかった。
「若頭…これ以上はなにも出てこないと思います…」
「ああ…そうだな…」
組長は俺達のことを眺めていたが立ち上がるとタバコに火を着けた。
祐也が灰皿を持ってくる。
「焦らなくていい。じっくりいこうや…」
あの日から、この人はなにか雰囲気が変わった。
氷の様に切れるのに、ずっしりと地に根を張っている。
「西村の残党を張っていれば何か出るだろ」
「それは…こっちの仕事じゃありませんね」
シゲが混ぜっ返すと、組長は微笑んだ。
マンションを出ると、二宮の運転する車が待っていた。
「まだあいつに運転させてんのか…」
「あいつがやるって言うんですよ…」
俺もちょっと困っていた。
幹部のくせに運転手やんなよ…