第8章 竜鳴
「総長!」
本葬が終わって、姐さんの部屋で一服していた時だった。
「どうした、相葉…」
その後ろには東山と近藤が居た。
「姐さんが見当たりません…」
「えっ…」
慌てて部屋の奥にある、姐さんが寝起きしている部屋を開けた。
そこは見事にもぬけの殻になってた。
「…姐さん…」
「どうする…総長…」
「仕方ない…捜さないでおこう…そういう約束だ」
姐さんがいつも座っていた座布団に触れる。
ここで…俺の小学校に持っていく雑巾縫ってくれたっけ…
ふと、隅に置いてある文机を見た。
そこには、コーヒー豆が二袋置いてあった。
「相葉…」
「はい」
「姐さんにコーヒー豆買うところ聞いたのか?」
「あっ。はいあの後すぐ…」
「そっか…」
コーヒー豆を手に取ると、涙が出た。
誰にも見られないようにすぐに袖で拭った。
「姐さんが何か困って頼ってきた時は…絶対に助けるんだぞ…」
「はい…もちろんです…」
近藤と東山に顔を見られないよう、部屋を出た。
後ろをついてくる3人…
これから喜多川の幹部になる。
「おい」
「なんでしょう」
「明日、盃事だ」
「えっ…」
「草彅と喜多川の盃だ。それと、まだ俺は正式には大野組の組長だからな…智也と親子の盃をする」