第7章 レクイエム
「組長、ちょっとお話が…」
若衆の樺島が組長に話しかけるのを見かけた。
「なんだ?カバ…」
「ここじゃちょっと…」
椛島は組長の背中を押して長部屋へ入っていった。
事務所には誰も居ない時間帯。
たまたま俺はショバへ取り立てに行くところだった。
忘れ物をして事務所に戻ってきた。
嫌な予感がした。
そっと長部屋のドアに耳をつけて中を伺う。
「どうしたんだ?カバ…深刻な顔して…」
中から組長の優しい声が聞こえる。
この人は…いくら身内だからって油断しすぎるところがある。
それが…信頼されてると組員には映るのだろうけど…
下心を持った奴には、餌にしかならない。
「俺…みちゃったんです…」
「何を?」
「若頭が組長の部屋から出てくるのを…」
「あ?まあそういうこともあるだろうよ…俺の部屋でいろいろ話するからよ」
「違うんです…」
暫く沈黙があった。
「あっ…カバっ…」
「組長が…女役なんですね…」
「えっ…」
「俺…久しぶりにあんなに興奮したなぁ…」
「なんのことだよ、離せ…」
「皆知ってるのかな…アノ時の組長はあんなに可愛いって…」
「離せっ…」
「言われたくなかったら、抱かせろよ」