第6章 昇る竜
「…じゃあ、矢崎の息子はバラしたんですか…」
「ああ…後始末は草彅がした」
「わかりました…」
松本と二宮に昨夜の顛末を話した。
二人は黙りこんだけど、始末のついていることだからそれ以上はなにも言わなかった。
「城島にも言っとけ」
松本に言って、俺達は姐さんの部屋を出た。
途中トイレに寄って出たところで、松本がぐいっと身体を寄せてきた。
「なにしやがる」
「唇が…切れてる…」
指で唇をなぞると、松本は真剣な眼差しを俺に向けた。
「いつでも…俺を呼んでください…」
そう言って身体を離すと、トイレを出て行った。
鏡で唇を見たら、端のほうが切れていた。
いつの間にか噛み締めていたんだろうか。
そっと水で唇を洗った。
トイレを出ると、そのまま座敷に向かった。
弔問客の中でも、総長・組長クラスが集まってきていた。
頭を下げながら座敷に入ると、空気がピンと張った。
座敷の一番上座に座ると、満場を見渡した。
小杉が俺の前に茶を置いた。
東山と近藤が並んで俺に頭を下げた。
「総長、おはようございます」
「ああ…」
これを見て、場の空気が一変した。
俺は、喜多川一家の総長になった。
【昇る竜 END】