The result of revenge [ディアラバ]
第12章 What we want to protect~守りたいもの
────月蝕当日────
オレ達始祖は幽閉されていた万魔殿から、全て計画通りに脱出する事が出来た。
最後に結界の外の空気を吸ったのはいつだったか...
それさえも忘れる位、長い年月を過ごした。
次第に減っていった始祖の一族達のコトを思うと、どこか苦しい。たった三人...
兄さんと、オレ、そして───
«ユウラ»
そう、アイツは始祖唯一の希望で、唯一オレが大切だと思えた女だった...
今のこの開放感を隣で感じたかった
「...ま、もう居ないんだけどね。」
ふとこぼれたオレの一言に、月蝕のせいなのか、もしくは久しぶりの魔界の空気に高揚している兄さんが反応した
「そうだな。ユウラはもう居ない...」
兄さんの方へと向くと、復讐の念にかられ続けていた表情とは裏腹に、どこか穏やかな表情をしていた。
「ねぇ兄さん!これからどうする?」
「...決まっている。」
「カールハインツのトコへ行くつもりだよね」
「無論だ。」
そう言うと歩き出した兄さんの後を追いかける様にして、オレも歩みを進めた...
生い茂る木々の中、真っ赤に染まった月が視界の中に入る。
「たまんないね、この感覚...」
と、月を見ながら言った。
兄さんは特に反応する訳もなくただ目の前を歩いている
「...っ、止まれ。シン」
突然歩みを止めた兄さんが言った
次の瞬間、オレにも何があったのか分かった。
「この感覚...」
「あぁ、ユウラだ。お前も感じているだろう?」
「あぁ。」
オレにアイツの匂いや感覚が感じ取れない訳がない。
ただ、何か違和感を感じるのは気のせいじゃない...
「だが、何か変だ。何なのだこの気配は...確かにユウラなのだが、どこかまた別人の様だぞ。」
兄さんも感じていた。
「人間臭いね」
「カールハインツめ、何をした...」
突然憎しみに満ち溢れた口調になった兄さんは、その後何も喋らずただ難しい表情をしたまま、アイツの気配の方へと歩き出した。
──カールハインツ──
奴が何を考えてんのかサッパリわからないけど
まさか人間の血でも混ぜた...いや、むしろほぼ人間にしちゃった。とかね...
「ホント胸糞悪いよ」
「...そうだな。」