The result of revenge [ディアラバ]
第10章 Lunar Eclipse~月蝕~prologue
「...昨夜、急遽調合したものです。急いだものですから、完璧とまではいきませんが、全く無いよりはましだと思いますよ。まぁ...臭いは、そうですねぇ...なんとも言えませんが。クク...ま、今の貴女にはお似合いでしょう」
「え、レイジさんひどい!こんな時にそんな事言うなんて」
レイジさんは小瓶をしまいながら、私をからかう様に、相変わらず意地悪な事を言ってくる
私は、そんな彼が愛しくてつい笑ってしまう。
「何がおかしいのです!さっきから、だらしなくて見ていられません。これからお父上の居城へ行くのです、もちろん私のパートナーとし───」
「...いえ、私の隣を歩くのですから、ユウラにはもっと淑女の様な振る舞いをして頂かないと困ります」
〝パートナー〟と言いかけたのに、途中で止めてしまった事に少し不満を感じつつも、私の意識は、次第に扉の先にある魔界の事が気になって仕方なくなっていた...
「すみません。気をつけます...」
〝淑女〟なんて言葉、私には不釣り合いなのは誰から見ても分かる事なのに...
とりあえず今は素直に返事をした。
レイジさんは扉の方へと向き、
「では、行きましょう。」
と、一言言い放つ
「はい。」
私も、心の準備をするかの様にハッキリと返事をした。
そして重厚な扉が開かれる────
〝魔界〟
そこは、私の生まれ故郷...
とは言っても、万魔殿の中でしか生活した事がない私にとっては、何もかもが新鮮だった。
薄暗く、木々が生い茂る道をひたすらレイジさんの後ろを付いて歩いて行く...魔界の道を歩けば歩いて行くほど、私の中に流れている始祖の血が騒いでいるのが、人間の世界に居た時よりはるかに強く感じる...
「ユウラ、足元をよく見て歩きなさい。少し足場が悪いですから...貴女は落ち着きがない方の様なので、いつもよりも気を引き締めなさい、いいですね?」
ふと振り返り、私の方へ注意を促した。
そんなレイジさんの心配をよそに、私は感覚が研ぎ澄まされているからか、足元を見ずともすんなりと歩けている...
「はい。大丈夫です!」
と、私が返事を返した時のレイジさんの表情が、一瞬曇った事まで確認出来るほどだった。